
在宅で受けられる体のケアを調べていると、「訪問リハビリ」と「訪問鍼灸マッサージ」という、名前は似ているのに役割の違う二つのサービスに行き当たります。どちらも自宅に来てもらえるぶん、何がどう違うのか、うちの家族にはどちらが合うのかで迷いやすいところです。この記事では、担う人の資格、目的、使う保険、対象、回数の考え方まで、両方を横に並べて整理します。あわせて、どちらを選ぶかの目安と、併用できるのかどうかもお伝えします。
要点から。訪問リハビリと訪問鍼灸マッサージの一番の違いは目的です。前者は理学療法士・作業療法士などが行う機能回復の訓練が中心で、多くは主治医の指示のもと介護保険を使います。後者ははり師・きゅう師という国家資格者が、医師の同意にもとづく医療保険で、慢性の痛みやしびれ、こわばりのケアを行います。使う制度が別なので、動作の訓練はリハ、長引く痛みには鍼灸、と目的で分けて考えられます。両方に困っているなら併用も選択肢で、費用は介護保険の限度額とは別枠です。訪問鍼灸マッサージは1回3,950円、1割で約395円が目安です。
いちばんの違いは、目的が「動き」か「つらさ」か
訪問リハビリと訪問鍼灸マッサージ。名前が近いので、退院を控えたご家族から「どちらを頼めばいいのか」とよく聞かれます。ざっくり分けるなら、リハビリは「もう一度動けるようにする」ことが目的で、鍼灸マッサージは「痛みやこわばりをやわらげる」ことが中心です。
たとえば、脳梗塞のあとに歩く練習や立ち座りの動作を取り戻したい。そういう場面で力になるのがリハビリです。一方、麻痺した側の肩がいつも重い、夜になると腰がこわばって眠れない。こうした日々のつらさに寄り添うのが鍼灸マッサージ、という住み分けになります。どちらが上ということではなく、見ている方向がそもそも違う、と考えるとわかりやすいと思います。
担い手の資格と、実際にすること
訪問リハビリを行うのは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。医師の指示のもとで、運動や動作の訓練を進めます。歩行や関節を動かす練習、飲み込みや言葉の練習まで、その人の状態に合わせて中身が変わっていきます。
訪問鍼灸マッサージのほうは、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師が担当します。医師の同意にもとづいて、はり・きゅう・マッサージに機能訓練を組み合わせるのが基本の形です。硬くなった筋肉をゆるめ、めぐりを促しながら、動かしにくくなった関節に軽く運動を加えていく。国家資格を持つ人が体に触れて施術する点は、どちらにも共通しています。
保険と、要介護認定がいるかどうか
ここは混乱しやすいところです。訪問リハビリは主に介護保険で、原則として要介護認定を受けていることが前提になります(医療保険で行われる形もあります)。まだ認定が下りていない段階だと、そもそも入り口に立てないことがあるわけです。
訪問鍼灸マッサージは、仕組みそのものが違います。医師の同意書があれば医療保険(療養費)で受けられ、要介護認定はいりません。認定の結果を待っている間でも、同意書さえ用意できれば始められる。ここが、迷っているご家族にとって大きな分かれ目になることがあります。保険まわりの細かい話は訪問鍼灸マッサージは介護保険?医療保険?で整理しました。
うちの家族には、どちらが向いている?
「結局どっちなの」という問いに、ひとつの正解はありません。歩けるところまで戻したい、着替えや食事を自分の手でできるようにしたい。そんな目標がはっきりしているなら、動作の訓練を積み重ねるリハビリが軸になります。
反対に、大きな回復を目指すというより、いまある痛みやしびれ、冷え、こわばりを少しでも楽にしたいという段階なら、鍼灸マッサージのほうが日々の暮らしに合うことが多いです。寝たきりに近く、動かす練習よりもまず体をほぐしてあげたい、というケースでも選ばれています。どんな方が対象になるかは訪問鍼灸マッサージはどんな人が利用できる?もあわせてご覧ください。
併用はできる。ただし一つだけ注意
意外と知られていないのですが、この二つは、どちらか一方に絞る必要はありません。リハビリで動作の訓練を続けながら、鍼灸マッサージで痛みをやわらげる。役割が違うぶん、組み合わせることでお互いを補い合えます。
気をつけたい点が一つあります。同一部位について、医療保険のリハビリと鍼灸を同じ日に同時に算定することはできません。ただ、これは日程や部位の分け方でたいてい調整がつきます。しかも訪問鍼灸マッサージの費用は介護保険の限度額とは別の枠で扱われるので、介護保険のサービスをすでに目一杯使っている方でも、上乗せで受けやすいという利点があります。
費用の考え方
訪問鍼灸マッサージの費用は、1回の施術を受けた場合で総額3,950円、1割負担の方ならそのうち約395円が目安です。週2回のペースで続けたとすると、1割負担で月およそ3,160円ほど。介護保険の限度額を圧迫しないぶん、家計の見通しは立てやすいほうだと思います。
金額の内訳や、負担割合ごとの違いは料金はいくら?医療保険の自己負担額と仕組みにまとめました。体の感じ方には個人差がありますので、まずは無理のない回数から始めて、様子を見ながら調整していくのがよいと思います。
よくある質問
訪問リハビリと訪問マッサージは併用できますか?
併用できるケースは多いです。使う制度が別なので、訪問リハビリで機能訓練を受けながら、訪問鍼灸マッサージで痛みやしびれのケアを受ける、という方もいます。今の利用状況によっては調整が要る場合もあるので、状況を伺ったうえでご案内します。
両方使うと、介護保険の限度額を超えてしまいませんか?
訪問鍼灸マッサージの費用は医療保険で計算するため、介護保険の区分支給限度額とは別枠です。訪問リハビリを介護保険で受けている方でも、限度額を圧迫せずに痛みのケアを加えられます。
訪問リハと訪問鍼灸マッサージ、どっちがいいですか?
目的で分けて考えると選びやすくなります。歩行や動作の回復・維持を目指すなら訪問リハビリ、長引く痛みやしびれ・こわばりを和らげたいなら訪問鍼灸マッサージが向きます。どちらが上ということではなく、いま一番困っていることが軸です。
どちらを先に始めればいいですか?
決まった正解はありません。いま一番困っていることが「動作の訓練」なのか「痛みや冷えのケア」なのかで考えると選びやすいです。両方に困っているなら併用も選べます。迷う場合は、今の状況を聞かせてください。
使う保険は同じですか?
違います。訪問リハビリは主治医の指示のもと、多くは介護保険を使います(状態により医療保険の場合もあります)。訪問鍼灸マッサージは、医師の同意にもとづく医療保険を使います。この保険のちがいが、費用の枠のちがいにもつながっています。
費用はどのくらい違いますか?
訪問鍼灸マッサージは1回の総額が3,950円で、自己負担は1割の方でおよそ395円が目安です。介護保険の限度額とは別枠で考えられます。訪問リハビリの費用は使う保険や回数で変わるので、担当のケアマネジャーや事業所にたずねると具体的な金額が分かります。
訪問リハビリを受けていますが、鍼灸も足せますか?
制度が別なので、足せることが多いです。訪問鍼灸マッサージの費用は介護保険の限度額とは別枠なので、リハの回数を減らさずに痛みのケアを加えられます。今の利用状況によっては調整が要る場合もあるので、状況を伺ったうえでご案内します。
ケアマネジャーがいないのですが、相談できますか?
できます。まだ介護保険のサービスを使っていない方や、どこに相談すればいいか分からない方には、地域包括支援センターなど、どこに相談すればよいかも含めてご案内します。まずは今の状況を聞かせてください。

