
服を着替えるとき、髪をとかすとき、高い棚に手を伸ばすとき——そのたびに肩がズキッと痛む。夜になると肩がうずいて眠れない。五十肩や長引く肩の痛みは、日々の何気ない動作をひとつずつ奪っていきます。
ご高齢になるほど回復にも時間がかかりやすく、痛くて治療に通うのもおっくうになりがちです。この記事では、そうした肩の痛みに訪問鍼灸マッサージができること、注意したいサイン、費用のことまでを、施術の現場からお伝えします。
五十肩は、時期によって「していいこと」が変わります
五十肩は、正式には肩関節周囲炎などと呼ばれ、肩の関節やそのまわりに炎症が起きて、痛みと動かしにくさが出る状態です。強く痛む時期、動かしにくさが目立つ時期、少しずつ回復に向かう時期と、時間をかけて移り変わっていくのが特徴です。
ここで大事なのは、時期によって「していいこと」が違うということ。強く痛む時期に無理に動かせば悪化しますし、逆に痛みが引いてきたのに動かさないままだと、肩が固まってしまいます。この見きわめを誤って、自己流でこじらせる方は少なくありません。
その前に——こんな肩の痛みは、まず医療機関へ
次のような場合は、まず整形外科などの受診をおすすめします。骨折や、五十肩とは別の問題が隠れていることもあるからです。
- 転んで肩を強く打ったあとの激しい痛み
- 肩の変形がある
- 腕がまったく上がらず発熱をともなう
- 腕にしびれや力の入らなさを感じる
訪問の現場で、まず診るところ
肩の痛みで伺ったとき、まず確かめるのは、肩そのものだけではありません。五十肩では、肩の関節に加えて、首や背中、肩甲骨のまわりの筋肉まで固くなっていることがとても多いからです。今が痛みの強い時期なのか、動かしにくさが中心の時期なのかも見きわめます。腕がどこまで上がるか、どの動きで痛むかを確かめながら、その日にしていいケアの範囲を決めていきます。
鍼やお灸、手技でできること
鍼やお灸には、こわばった肩まわりの筋肉を和らげ、血のめぐりを促し、痛みを軽くする働きが期待できます。肩の関節だけでなく、首・背中・肩甲骨まわりまで含めて整えることで、楽になる方がいます。あわせて、痛みの時期に合わせて、動かせる範囲を保つための機能訓練をていねいに行います。強い時期は無理をせず、落ち着いてきたら少しずつ動きを広げる。この加減を、その方の状態に合わせて進めていくのが、こじらせないための要になります。

「通院がつらい」を、家で解決する
肩が痛むと、その治療に出かけること自体がつらくなります。服の着脱がしんどい、つり革につかまれない、それだけで痛みが走る。その負担がなくなるだけで、ケアは続けやすくなります。訪問鍼灸マッサージは、五十肩を含む肩の痛みで医師が治療の必要を認めれば、医療保険で受けられます。自己負担は1割の方で1回およそ395円。訪問の交通費は今はかからず、介護保険の限度額とも別枠です。同意書の手続きもこちらでお手伝いするので、ご家族の負担はほとんどありません。
実際にあった、体の変化
施術のあとに、腕を横に上げてみて「痛くない」と、ご本人が驚かれたことがありました。少し前まで、その動きで顔をしかめていた方です。こうした瞬間は、私たちにとってもうれしいものです。引き続き、鍼と筋肉のこわばりを和らげるケアを続けています。
別の方は、背中全体をほぐす施術のあと、「体が軽い」「翌朝の目覚めがいつもと違う」と話してくださいました。肩や背中のこわばりは、眠りの質にまで影響することがあります。変化のあらわれ方には個人差がありますが、動かしやすさが戻ると、日々の過ごしやすさも変わっていきます。
どれくらいの頻度で、どう進める?
多くの方は、週1回から3回くらいのペースで続けます。痛みが強い時期はやや多めに、落ち着いてきたら間隔をあけて、と状態に合わせて調整します。1回はおおむね20分から30分。その日の痛みや動かしにくさを確かめ、鍼・お灸・手技・機能訓練を組み合わせていきます。施術のたびにようすを記録し、必要に応じて主治医やケアマネジャーにも共有します。良くなってきたら、こちらから間隔をあける提案もします。
痛くて眠れない夜が続くなら
五十肩のつらさのひとつが、夜の痛みです。横になると肩がうずく、痛む側を下にできない、寝返りで目が覚める。眠れない日が続くと、体力も気力も削られ、日中の元気まで失われていきます。肩まわりのこわばりが和らぐと、この夜の痛みが軽くなり、眠りが深くなる方がいます。痛みそのものだけでなく、眠りや一日の過ごし方まで見ながらケアしていくのが、訪問で継続する良さでもあります。
我慢するほど、肩は固まっていきます
「そのうち治ると聞いたから」と我慢して過ごすうちに、動かせる範囲がせまいまま残ってしまうことがあります。五十肩は時間とともに落ち着くこともありますが、その間に肩が固まると、あとで元に戻すのは簡単ではありません。痛みを和らげながら、固まらないように少しずつ動きを保つ。この二つを両立させることが、回復後の肩の使いやすさを守ります。我慢して動かさずにいるより、状態に合ったケアを早めに始めるほうが、結果的に近道になることが多いのです。
よくある質問
もう長く痛みが続いていますが、今からでも遅くないですか。
長引いている肩でも、こわばりを和らげ、動きを保つケアには意味があります。あきらめる前に、一度状態を見せてください。曖昧な期待をあおることはしませんが、できることは正直にお伝えします。
整形外科に通っていますが、鍼灸も受けられますか。
同じ肩の痛みで医療保険のリハビリと鍼灸を同時に受けることには決まりがあるので、今の治療内容をうかがったうえでご案内します。お薬や注射との組み合わせも、状況を教えていただければ無理のない形を一緒に考えます。まずは相談だけでも構いません。


