
椅子から立ち上がるとき、膝がズキッと痛む。階段の上り下りがこわい。座っているだけでも膝がうずく。膝の痛みは、ご高齢の方の「動きたくない」を生む、大きな理由のひとつです。
痛くて外に出るのもおっくうになり、通院そのものが負担になっていきます。この記事では、そうした膝の痛みに訪問鍼灸マッサージができること、注意したいサイン、費用のことまでを、施術の現場からお伝えします。
高齢の方の膝の痛みは、こじれると生活を狭める
ご高齢の方の膝の痛みは、長い年月のあいだに膝の軟骨がすり減り、関節に負担がかかって起こることが多いとされます。はじめは動きはじめに痛む程度でも、進むと歩くたびに痛んだり、膝がまっすぐ伸びにくくなったりします。
やっかいなのは、痛みをかばって歩かなくなると、膝を支える太ももの筋肉が落ち、膝への負担がさらに増える、という悪循環です。膝の痛みは、放っておくと外出も気力も細らせていく。だからこそ、痛みを和らげることと、膝を支える体を保つことを、両輪で進めることが大切になります。
その前に——こんな膝の痛みは、まず医療機関へ
次のような場合は、まず整形外科などの受診をおすすめします。関節の中で炎症が起きていたり、別の問題が隠れていたりすることがあるからです。
- 膝が急に大きく腫れて熱をもっている
- 強い変形がある
- 体重をかけられないほど痛む
- 発熱をともなう
訪問の現場で、まず診るところ
膝の痛みで伺ったとき、確かめるのは膝そのものだけではありません。膝を支える太ももやふくらはぎ、お尻の筋肉が張っていないか、膝まわりが冷えて血のめぐりが滞っていないか、膝がどこまで曲げ伸ばしできるか。膝の痛みは、膝だけの問題ではなく、足全体の状態が関わっていることが多いからです。そこを見きわめてから、その日のケアを組み立てます。
鍼やお灸、手技でできること
鍼やお灸には、こわばった膝まわりの筋肉を和らげ、血のめぐりを促し、痛みを軽くする働きが期待できます。膝を支える太ももやふくらはぎの張りをゆるめることで、膝への負担が和らいで楽になる方がいます。あわせて、膝を支える力や動く範囲を保つための機能訓練も、その方の状態に合わせて行います。痛む膝だけを見るのではなく、足全体、体全体のバランスを整えながら進めていきます。

「通院がつらい」を、家で解決する
膝が痛むと、その治療のために出かけること自体が負担になります。歩くのがつらい、段差がこわい、バスの乗り降りが大変。その負担がなくなるだけで、ケアはぐっと続けやすくなります。訪問鍼灸マッサージは、膝の痛みで医師が治療の必要を認めれば、医療保険で受けられます。自己負担は1割の方で1回およそ395円。訪問の交通費は今はかからず、介護保険の限度額とも別枠です。同意書の手続きもこちらでお手伝いするので、ご家族の負担はほとんどありません。
実際にあった、体の変化
以前は座っているだけでも左膝が痛んでいた方が、膝を和らげる施術を続けるうちに、痛みを感じなくなった、と話してくださいました(その日は最後に肩もほぐしました)。長く続いた膝の痛みでも、あきらめずに続けることで変わることがあります。
別の日には、その日もまだ左膝が痛むという方に、下肢を中心に全身の筋肉のこわばりを和らげ、最後に自律神経を整えるようローラー鍼で仕上げました。膝の痛みは、その日その日の状態に合わせて、体全体を見ながらケアしていきます。変化のあらわれ方には個人差があります。
どれくらいの頻度で、どう進める?
多くの方は、週1回から3回くらいのペースで続けます。痛みが強い時期はやや多めに、落ち着いてきたら間隔をあけて、と状態に合わせて調整します。1回はおおむね20分から30分。その日の膝の痛みや動かしにくさを確かめ、鍼・お灸・手技・機能訓練を組み合わせていきます。施術のたびにようすを記録し、必要に応じて主治医やケアマネジャーにも共有します。良くなってきたら、こちらから間隔をあける提案もします。
ご家庭で、無理なくできること
施術と合わせて、日々の心がけも支えになります。膝を冷やさないようにする。痛くない範囲で太ももの筋肉を軽く動かす。急に重い物を持って膝に負担をかけない。正座など膝に負担の大きい姿勢を避ける。膝が痛いと動くのがこわくなりますが、まったく動かさないのも逆効果です。訪問のたびに、その方に合った動かし方や、家の中で負担を減らす体の使い方をお伝えします。
膝が痛いと、外出も気持ちも小さくなる
膝の痛みの本当のこわさは、痛みそのものより、それが生活を少しずつ狭めることにあります。歩くのがおっくうになって外出が減る、人と会う機会が減る、動かないことで足がさらに弱る。体だけでなく、気持ちの張りまで失われていく方を、現場で何人も見てきました。だからこそ、痛みを和らげて「また少し動けるかもしれない」と思えることには、大きな意味があります。膝のケアは、その方の生活の範囲を守るケアでもあると考えています。
動いていい?休むべき?迷ったときは
膝が痛いと、「動かしたほうがいいのか、休んだほうがいいのか」で迷う方が多いです。実はこれは、その日の状態によって答えが変わります。腫れて熱をもっているときは休む、落ち着いているときは無理のない範囲で動かす、というのが基本ですが、加減は自分では判断しづらいものです。訪問のたびに、今日は動かしていい日か、控えたほうがいい日かも含めてお伝えするので、迷いながら我慢したり、無理をしたりせずに済みます。
よくある質問
膝に水がたまっているのですが、鍼灸を受けても大丈夫ですか。
膝が腫れて熱をもっているようなときは、まず医療機関の受診をおすすめします。落ち着いている状態であれば、まわりの筋肉を和らげるケアを、無理のない範囲で行います。今の膝の状態や、病院で言われていることを教えてください。
もう長く膝が痛みますが、今からでも遅くないですか。
長引いている膝でも、こわばりを和らげ、膝を支える体を保つケアには意味があります。痛みが和らぐと、動くのがこわくなくなり、少しずつ生活の範囲が戻っていきます。まずは相談だけでも構いません。


