施設の訪問鍼灸マッサージ|種別ごとの可否

施設に入っている親に、痛みやしびれのケアを受けさせてあげたい。でも、施設の中まで訪問の鍼灸マッサージに来てもらえるのだろうか。そんなご相談をよくいただきます。答えを先にお伝えすると、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム、グループホームなど多くの施設では、ご自宅と同じように受けられます。一方で介護老人保健施設(老健)だけは、仕組みの都合で原則むずかしくなります。まずは入居先の種別を確かめるところから始めましょう。

この記事のポイント

施設種別ごとに、ざっくりと可否をまとめます。有料老人ホーム(介護付き・住宅型)、サ高住、特養、グループホーム、ケアハウスは「受けられることが多い」区分。ただし契約や施設の方針で変わるため、施設・主治医・ケアマネジャーへの確認が前提になります。老健は「原則むずかしい」区分で、医療費が施設側に包括される仕組みのためです。対象は医師が必要と認めた慢性的な痛みやしびれ。医療保険で計算し、1回の施術は総額3,950円、1割負担なら約395円が目安です。

「うちの施設でも受けられますか」という質問について

お問い合わせの電話で、いちばん多いご質問のひとつがこれです。「今は施設に入っているのですが、そちらにも来てもらえますか」。結論からお伝えすると、ご入居中の施設でも訪問鍼灸マッサージを受けられるケースは多いです。ご自宅と同じように居室まで伺って施術します。

ただし、ひとくちに施設といっても種類はさまざまで、種別によって、また同じ種別でもその施設ごとの方針によって、受けられるかどうかや必要な手続きが変わってきます。すんなり受けられるところもあれば、事前に確認しておいたほうがよいところもある、というのが実際のところです。以下、種別ごとの一般的な傾向を整理してみます。あくまで「多くの場合こうなりやすい」という目安として読んでいただければと思います。

比較的受けやすいことが多い施設

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、軽費老人ホームやケアハウス、認知症対応のグループホーム。こうした住まいに近い性格の施設では、多くの場合、ご自宅にお住まいの方と同じように受けていただけます。外部のヘルパーや訪問診療が日常的に出入りしている施設も多く、そうした環境であれば、私たちのような外部の施術者が居室に伺うことにも慣れておられます。

とはいえ、これも施設によって運用が異なります。外部サービスの受け入れに独自のルールを設けているところもありますので、「この種別なら大丈夫」と決めつけず、担当の方に一声かけておくのが安心です。ちなみに、一人暮らしのお宅で受けられるかどうかについては一人暮らしでも受けられる?のページでも触れています。

特別養護老人ホームで確認しておきたいこと

特別養護老人ホーム(特養)の場合は、少し事情が変わります。施設に配置医がいて、施設としてのリハビリ体制が組まれていることが多く、そことの兼ね合いで受け入れの可否や条件が決まることがあります。まったく問題なく受けられる特養もあれば、方針として外部の医療保険サービスは相談のうえで、というところもあります。

ですので、特養にお住まいの方については「受けられません」とも「受けられます」とも一律には言えません。施設の相談員さんやケアマネジャーに、外部の鍼灸マッサージを利用したい旨を一度確認していただくのが確実です。その確認のやり取りは当院からご施設へ連絡してお願いすることもできますので、遠慮なくお声がけください。

老健と入院中は事情が異なります

介護老人保健施設(老健)は、施設の中で医療が提供される性格を持っています。医療にかかる費用が施設側でまとめて扱われる仕組みのため、外部の医療保険サービスがその期間は制限される場合があります。老健にご入居中の方は「受けられないこともある」という前提で、まずは施設に確認していただくのが安全です。ここは制度の仕組み上、慎重に確認しておきたいところです。

また、病院などの医療機関に入院しておられる間は、原則として訪問鍼灸マッサージの対象外になります。入院中は病院側の治療が中心になりますので、退院されて生活の場が定まってから、あらためてご相談いただく流れになります。どこまで伺えるかという範囲については「対応エリアはどこまで来てもらえる?」もあわせてご覧ください。

受ける前の確認と場所の調整

実際の進め方をお伝えします。施設で受ける場合、最初のステップは、施設の担当者やケアマネジャーに「外部の訪問鍼灸マッサージを利用したい」と一言伝えて確認をとることです。ここの確認がとれれば、あとの段取りは当院で進められます。

次に、施設からの許可と、施術する場所の調整です。居室で行うのか、機能訓練室のような共用スペースを使わせてもらうのか、施設によって都合が違います。到着時間や滞在の仕方についても、施設の生活リズムに合わせる必要があります。この手の連絡や調整は、ご本人やご家族に全部やっていただくのではなく、当院が施設と直接やり取りして進められます。書類のことも含めて、間に立ってお手伝いします。

他の医療保険サービスとの重なりに注意

もうひとつ気をつけたい点があります。施設によっては、施設の側で医療保険を使ったリハビリを行っていることがあります。同じ部位について、医療保険のリハビリと鍼灸を同じ時期に保険で受けることはできません。制度上、同一部位では同時に算定できない決まりになっているためです。

とはいえ、部位が違えば併用できることもありますし、施設のリハビリの内容によっては問題にならない場合もあります。ここも一律ではないので、いま施設でどんなサービスを受けているかを教えていただければ、重ならないように整理してご案内します。要介護認定を受けている方でも、介護保険の限度額とは別枠になりますので、そのまま併用できます。

費用と、受けるための条件

費用の目安もお伝えしておきます。施術は1回の総額が3,950円で、健康保険(療養費)が使えます。自己負担が1割の方で約395円が、1回あたりのおおよその負担です。週2回のペースなら、1割負担で月におよそ3,160円。関節を動かす運動も、鍼灸に加えるケアとして行うもので、追加料金はかかりません。

受けるための条件は、医師の同意書があることです。療養費の対象となるのは、神経痛・リウマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症といった症状で、要介護認定は必要ありません。施術は痛みやこわばりをやわらげて日々の暮らしを支えることを目的としたもので、病気そのものを治すものではありませんし、感じ方には個人差があります。施設での利用をお考えでしたら、まずは今の状況をお聞かせいただければ、確認から段取りまで一緒に進めていきます。

施設にうかがうときのこと

施設にうかがう場合は、その日のご様子を施設スタッフの方からうかがってから始めます。熱はないか、食事はとれているか、普段と違うことはなかったか。ある日は「本日は発熱があり体調が優れない」と教えていただき、水分をとっていただくときは必ずスタッフの方を呼ぶようにしました。ご家族から「気持ちよさそう」「お喜びのご様子」というお話をいただくこともあります。施設の方・ご家族・私たちの三者で様子を共有しながら進めます。

よくある質問

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に入っている親でも、訪問マッサージは受けられますか?
多くのサ高住では、施設の了承を得たうえで受けられます。サ高住は「生活の場」の位置づけで、外部の医療サービスを取り入れやすいためです。対象は医師が必要と認めた慢性的な痛みやしびれ。まずは施設のスタッフやケアマネジャーにご相談ください。

特別養護老人ホーム(特養)で鍼灸を受けられますか?
多くの特養では、施設の了承を得たうえで受けられます。医師が必要と認めた慢性的な痛みやしびれ、麻痺のあとのこわばりなどが対象です。同意書の手続きや施設との段取りは、のびのびが進めます。

有料老人ホームで訪問マッサージは頼めますか?
介護付き・住宅型のどちらの有料老人ホームでも、居室にお住まいの方のところへ伺えることが多いです。日時はデイサービスや行事と重ならないよう調整します。施設によっては受け入れのルールがあるので、事前に確認しながら進めます。

グループホームで鍼灸は受けられますか?
認知症対応型のグループホームでも、医師が必要と認めた慢性的な痛みやしびれがあれば受けられることが多いです。なじみのある居室や共有スペースで落ち着いて受けられるよう、スタッフと相談して場所や時間を決めます。初回はご家族に立ち会っていただくと、進め方を一緒に確認できます。

介護老人保健施設(老健)で訪問マッサージがなぜ受けられないのですか?
老健は在宅復帰を目指す施設で、医療にかかる費用が施設側に包括される仕組みのため、外部からの訪問鍼灸マッサージを保険で重ねて受けるのは原則むずかしくなります。まずは施設の医師やスタッフに施設内でのケアをご相談ください。

老健を退所したあとなら受けられますか?
はい。退所してご自宅や有料老人ホーム、サ高住などへ移られたあとであれば、あらためてご検討いただけます。移り先が決まった段階で声をかけていただければ、同意書の準備を含めて始め方をご案内します。

施設で受ける場合の費用はどのくらいですか?
1回の施術の総額は3,950円で、自己負担は1割の方で約395円が目安です。エリア内は別途の出張費がかからず同額。お支払いは月ごとにまとめてお願いしています。介護保険の限度額とは別枠です。

施設に外部施術者の受け入れルールがある場合はどうなりますか?
事前の届け出や出入りの手順が決められている施設もありますが、その確認や調整はスタッフとやりとりしながらこちらで進めます。ご家族や施設の手間ができるだけ少なくなるようにします。まずは施設・ケアマネジャーに受け入れの可否を確かめていただくところから始めます。

この記事の根拠

はり・きゅう、あん摩マッサージ指圧の療養費は、厚生労働省が定めた取扱いにもとづく制度です。制度そのものをご自身で確かめたいときは、厚生労働省の療養費について(新しいタブで開きます)をご覧ください。「被保険者のみなさまへ」の案内も、同じページからたどれます。

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