ご自宅で高齢の女性の腕にやさしく触れる訪問施術者

退院して自宅での生活が始まると、ほっとする一方で、「このまま体は保てるだろうか」「通院のリハビリだけで足りるのか」という不安が出てきます。手足のこわばり、動かしにくさ、しびれや痛み。脳梗塞や脳出血の後遺症は、日々のケアの積み重ねで、その後の暮らしやすさが大きく変わります。

この記事では、後遺症のある体に訪問鍼灸マッサージができること、注意したいサイン、費用のことまでを、施術の現場からお伝えします。はじめにお伝えしておくと、鍼灸マッサージは後遺症そのものを消し去るものではありません。こわばりや痛みを和らげ、動く範囲を保ち、少しでも過ごしやすい毎日を支える——そのためのケアだとお考えください。

後遺症は「動かさないと進む」という難しさがあります

脳血管のトラブルのあとには、片側の麻痺、しびれ、筋肉のこわばり、関節が硬くなること、痛みなどが残ることがあります。やっかいなのは、動かしづらいからと体を動かさずにいると、筋肉はさらに固まり、関節の動く範囲がせまくなっていくことです。硬くなった関節は元に戻すのが難しく、着替えやおむつ交換といった介助まで大変になります。だからこそ、早い時期から、こわばりを和らげ、動きを保つケアを続けることに意味があります。

その前に——こんなときは、すぐ医療機関へ

次のような症状が急に出たときは、再発のおそれがあります。ためらわずに救急や医療機関へ連絡してください。

  • 新しく手足の力が入らなくなった
  • ろれつが回らない
  • 顔の片側が下がる
  • 経験したことのない激しい頭痛

こうしたサインは、鍼灸でようすを見てよいものではありません。安全のために、まずここをお伝えしています。

訪問の現場で、まず診るところ

お宅に伺って最初に確かめるのは、麻痺のある側の筋肉がどれくらい固くなっているか、関節が硬くなりかけていないか、そして患側の手足が冷えていないか、といった点です。同じ後遺症でも、こわばりが強い方、痛みが目立つ方、動きの左右差が大きい方と、体の状態は一人ひとり違います。今どの段階にあるのかを見きわめてから、その日のケアを組み立てます。ご家族が気づきにくい小さな変化も、毎回触れているからこそ拾えることがあります。

鍼やお灸、手技、機能訓練でできること

鍼やお灸、体をほぐす手技には、こわばった筋肉を和らげ、血のめぐりを促し、痛みやしびれを軽くする働きが期待できます。あわせて、関節をやさしく動かして動く範囲を保つ機能訓練や、足の指を使う練習、立ち座り・歩行の練習など、その方の段階に合わせたリハビリ的なケアも行います。ねらいは、今ある力を保ち、少しずつでも動かしやすさを取り戻していくことです。後遺症のうち、痛みやしびれといった症状は、医師が治療の必要を認めれば保険の対象になります。

ご家族とともに施術者から説明を受ける高齢の女性

「通院がつらい」を、家で解決する

後遺症があると、外出そのものが大きな負担になります。付き添いがないと動けない、車椅子での移動が大変、転倒がこわい。その負担がなくなるだけで、ケアは続けやすくなります。訪問鍼灸マッサージは、医師の同意書があれば医療保険で受けられ、自己負担は1割の方で1回およそ395円。訪問の交通費は今はかからず、介護保険の限度額とも別枠なので、訪問リハビリやデイサービスと組み合わせて使えます。同意書の手続きもこちらでお手伝いします。慣れた自宅で、落ち着いて受けられるのも在宅ならではです。

実際にあった、体の変化

動きが硬くなっていた方が、数日前まで自分では上げられなかった足を、ご自身で持ち上げられるようになった、ということがありました。可動域が少しずつ広がっているのを、ご本人もご家族も感じてくださっています。別の方では、足の指でタオルをたぐり寄せる練習から始め、足首の動きを確かめながら、椅子からトイレまで、手すりを使わずに2mほど歩けるようになった、という日もありました。

歩く練習では、歩幅を大きくしたり小さくしたり、緩急をつけながら進めます。「少しこわい」とおっしゃる方も、声をかけながら一歩ずつ克服されていきます。ある方は、京都から大阪のお宅に引っ越したばかりで生活のリズムに慣れないなかでも、意欲的に取り組んでくださっています。変化のあらわれ方には個人差がありますが、こうした一歩の積み重ねが、暮らしやすさと、介助のしやすさにつながっていきます。

ご家族の負担を、少し軽くする

後遺症のケアを、ご家族だけで長く担うのは大変です。毎日の介助に加えて体のことまで気を配り続けるのは、心身ともに重い。専門の施術者が定期的に入ることで、体のケアの部分を任せられ、負担が少し軽くなります。施術のたびに体のようすをお伝えし、気になる変化は早めに共有するので、「見てもらえている」という安心にもつながります。

生活期こそ、止めずに続ける

入院中の集中的なリハビリの時期を過ぎ、自宅での「生活期」に入ると、劇的な回復よりも、今ある力をいかに保ち、少しずつ積み上げるかが大切になります。通院のリハビリには回数や期間の区切りがあり、思うように続けられないこともあります。訪問鍼灸マッサージは、この生活期を自宅で支える選択肢です。焦らず、しかし止めずに、こわばりを和らげ、体を動かし、めぐりを保つ。その地道な積み重ねが、半年後、一年後の暮らしやすさを左右していきます。

施設に入っていても受けられます

ご自宅だけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居されている方のところにも伺えます。施設の看護・介護スタッフやケアマネジャーと連携しながら進めるので、離れて暮らすご家族も、体のケアの部分を安心して任せていただけます。面会にいらしたときに、施術のようすや体の変化を直接見ていただくこともできます。

よくある質問

退院したばかりですが、いつから始められますか。
体の状態が落ち着いていれば、退院後の早い時期から始められることが多いです。まず状態をうかがい、無理のない形をご提案します。生活期に入ってからでも、始めるのに遅すぎるということはありません。

訪問リハビリも受けていますが、鍼灸も足せますか。
制度が別なので、併用できることが多いです。今の利用状況を教えていただければ、無理のない組み合わせを一緒に考えます。ご家族だけで抱え込まず、まずは相談から始めてください。

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