
体が思うように動かない、手足がこわばる、手がふるえる、動きはじめの一歩が出にくい。パーキンソン病とともに暮らすなかで、こうした体のつらさが少しずつ日々を制限していきます。
治療はお医者さんのもとで続けながら、こわばりや痛み、ふるえのケアを自宅で受けたい——そんなご家族の声は少なくありません。この記事では、パーキンソン病に伴う体のつらさに訪問鍼灸マッサージができることを、施術の現場からお伝えします。
はじめにお伝えしておくと、鍼灸マッサージはパーキンソン病そのものを治すものではありません。あくまで、病気に伴う筋肉のこわばりや痛み、動かしにくさを和らげ、日々を少しでも過ごしやすくするためのケアです。お薬による治療と並行して、体を整える手段のひとつとお考えください。
こわばりが、悪循環を生みやすい
パーキンソン病では、筋肉がこわばって固くなる、動作がゆっくりになる、手足がふるえる、歩きはじめの一歩が出にくい、といった症状があらわれます。こわばりが続くと、関節が動きにくくなり、肩や腰、足に痛みが出ることもあります。
動かしづらさから体を動かす機会が減ると、筋肉はさらに固まり、関節の動く範囲もせまくなる。この悪循環をゆるめることが、日々の過ごしやすさにつながります。着替えや寝返り、移動といった動作にも関わるので、ご本人だけでなく介助するご家族の負担にも直結します。
薬の効き方の波に、合わせて進める
パーキンソン病では、お薬が効いている時間帯と、切れてくる時間帯とで、体の動きやすさが変わることがあります。動きやすい時間もあれば、こわばりが強く出る時間もある。だから施術も、決まった型に当てはめるのではなく、その日その時間の体の状態に合わせて内容を変えていきます。ご本人やご家族に、いつ頃が動きやすいか、どの時間がつらいかをうかがいながら、受けやすい時間やペースを一緒に整えていきます。
その前に——こんなときは、主治医に相談を
次のような変化があるときは、まず主治医に相談してください。パーキンソン病は経過とともに状態が変わる病気なので、体調の大きな変化は、施術より先に医師の判断が必要です。
- 急に動けなくなった
- 転倒して強く打った
- 飲み込みにくさや息苦しさが強くなった
のびのびでも、気になる変化に気づいたときは、ご家族や主治医への相談をおすすめしています。
鍼やお灸、手技、機能訓練でできること
鍼やお灸、体をほぐす手技には、こわばった筋肉を和らげ、血のめぐりを促し、痛みを軽くする働きが期待できます。あわせて、関節をやさしく動かして動く範囲を保つ機能訓練を、その方の状態に合わせて行います。固まりやすい肩や腰、足まわりをていねいにほぐしていくことで、動かしやすさを保ちやすくなります。
無理に大きな動きを求めるのではなく、その日の調子に合わせて、こわばりをゆるめ、心地よく体を動かすことを大切にしています。パーキンソン病に伴う痛みやこわばりなどが、医師が治療の必要を認める状態であれば、保険の対象になります。

実際にあった、体の変化
施術の後半に、手のふるえ(振戦)が少し和らいだ、という日がありました。継続して、筋肉のこわばりを和らげるケアを進めています。別の方でも、鍼の痛みもなく受けられ、鍼のあとに手のふるえが和らいだ、という日がありました。
もちろん、パーキンソン病の症状には波があり、あらわれ方には個人差があります。それでも、こわばりが和らいだ時間に「体が動かしやすい」「表情がやわらかくなった」と感じられるご家族もいます。私たちは、そうした時間を少しでも増やせるよう、継続して関わっていきます。
「通院がつらい」を、家で解決する
動作がゆっくりになったり歩きにくさが出たりすると、外出そのものが大きな負担になります。付き添いがないと動けない、転倒がこわい。その負担がなくなるだけで、ケアは続けやすくなります。訪問鍼灸マッサージは、医師の同意書があれば医療保険で受けられ、自己負担は1割の方で1回およそ395円。訪問の交通費は今はかからず、介護保険の限度額とも別枠なので、訪問リハビリやデイサービスと組み合わせて使えます。慣れた自宅で、落ち着いて受けられるのも在宅ならではです。
転倒を防ぐためにも、動かしやすい体を
パーキンソン病では、歩きにくさやバランスの取りにくさから、転倒のリスクが高まります。転倒は、骨折や、その後の寝たきりのきっかけにもなりかねません。こわばりを和らげ、関節の動く範囲を保つことは、こうしたリスクへの備えにもつながります。施術だけで転倒を防げるわけではありませんが、動かしやすい体を保つことは、日々の安全にとっても意味があります。家の中で気をつけたい点も、状態を見ながらお伝えします。
ご家庭で、無理なくできること
施術と合わせて、日々の心がけも助けになります。体を冷やさないようにする。痛くない範囲でこまめに体を動かす。同じ姿勢を長く続けない。そして焦らず、ご本人のペースを尊重する。介助するご家族にとっても、力任せに動かすより、こわばりがゆるんだタイミングで声をかけるほうが、お互いに楽なことがあります。訪問のたびに、その方に合った動かし方や介助のコツもお伝えします。
長い付き合いだからこそ、無理なく続ける
パーキンソン病は、長い時間をかけて付き合っていく病気です。だからこそ、一度に大きく良くしようとするより、無理なく続けられる形でケアを重ねていくことを大切にしています。今ある力を保ち、こわばりを和らげ、少しでも過ごしやすい毎日を支える。ご家族だけで頑張りすぎず、体のケアの部分は任せながら、長く並走していく。訪問という形は、そうした継続に向いていると感じています。
よくある質問
お薬を飲んでいますが、鍼灸と併用して大丈夫ですか。
多くの場合は問題なく併用できますが、飲んでいるお薬や、主治医から言われていることは事前に教えてください。状態に合わせて施術の内容を調整します。
体調に波があるのですが、そういう日はどうなりますか。
その日の調子に合わせて、無理のない範囲でケアを行います。つらい日は軽めに、動ける日は少し動かして、と柔軟に対応するので、安心してお任せください。まずは相談だけでも構いません。


