
立ち上がるときや歩き始めに股関節の付け根がズキッと痛む、少し歩くと足の付け根やお尻が重だるくなる、靴下を履こうとかがむのがつらい。年齢を重ねると、股関節の不調を抱える方が多くおられます。痛みをかばって歩くうちに外へ出るのがおっくうになり、足腰全体が弱ってしまうこともあります。のびのび訪問施術院では、通院がむずかしくなった方のご自宅に伺い、鍼やお灸を使ったケアを行っています。ここでは、高齢の方の股関節の痛み、とりわけ変形性股関節症と、訪問という選択肢についてお伝えします。
この記事のポイント
股関節の慢性的な痛みで歩きづらいとき、医師が治療の必要を認めれば、訪問鍼灸マッサージを医療保険で受けられます。国家資格者が自宅に伺い、股関節まわりやお尻・太もものこわばった筋肉を鍼やお灸でゆるめ、可動域を保つ補助をします。費用は1回の総額3,950円のうち負担割合分だけで、1割の方で約395円。介護保険の限度額とは別枠です。ただし変形そのものを治すものではなく、治療の主役は整形外科などの医療。転倒後の強い痛みや熱感・腫れなど急な変化は、まず整形外科へご相談ください。
そもそも変形性股関節症とは、どんな状態なのか
股関節は、太ももの骨のてっぺんにある丸い部分が、骨盤側のくぼみにはまり込んでできています。ここの軟骨が年月をかけてすり減り、骨のかたちそのものが変わっていく。それが変形性股関節症です。特徴が出やすいのは、動き始めの一瞬です。椅子から立ち上がろうとした瞬間や、歩き出しの一歩目に、足の付け根やそけい部にズキッとくる。歩いているうちにやわらぐこともあり、「歳のせいかな」で片づけてしまいがちです。
進んでくると、痛みの出る動作がだんだん決まってきます。靴下をはこうとして足を組む、階段を下りる、しゃがんで床のものを拾う。股関節をぐっと曲げたりひねったりする動きで、そけい部やお尻の奥が痛む。かばって反対の足に体重を寄せるので、歩き方が左右に揺れ、いわゆる跛行になります。この段階になると、痛いのは股関節だけではありません。かばい続けた腰や膝、反対側の足の付け根まで、あとから悲鳴をあげはじめます。
この痛みは、まず整形外科へ
鍼やお灸、マッサージが役に立つのは、あくまで診断がついたうえでの話です。次のような痛みは、施術より先にお医者さんに診てもらってください。じっとしていても強まる痛み、急に足が動かせない・体重をかけられない、発熱をともなう関節の痛み、転んだあとの強い痛みや足が短くなった感じ、股関節の急な腫れや熱っぽさ。これらは骨折や関節の炎症など、様子を見てはいけないものが隠れていることがあります。変形性股関節症の「動き始めがつらいけれど動けばマシ」という痛みとは、性質がちがいます。迷ったら受診が先。順番を守れば、施術はそのあとで落ち着いて活きてきます。
伺って、はじめに確かめること
お宅に上がってまずするのは、痛む場所を押すことではありません。どの動作でどこが痛むのか、どちら側をかばって歩いているのか、寝返りや立ち上がりでどう体を使っているのかを見せてもらいます。変形そのものは画像を撮った整形外科が把握していますから、こちらが見るのはその変形をかばうために固まってしまった、まわりの筋肉のほうです。お尻の横の筋肉、太ももの内側、腰から股関節につながる奥の筋肉。片足をかばう暮らしが続くと、こうした場所に負担が偏って集まります。どこが張って、どこが逆にサボっているのか。そこを見きわめてから、はじめて手を入れていきます。
鍼やお灸、マッサージでできること・できないこと
正直にお伝えします。すり減った軟骨を元に戻したり、変わってしまった骨のかたちを削り直したりは、施術ではできません。そこは整形外科の領分で、進み具合によっては人工関節の手術を勧められる段階もあります。私たちがお手伝いできるのは、変形をかばって固くなった筋肉をゆるめ、動かせる範囲をこれ以上狭めないための下支えです。やっかいなのは、こわばりが悪循環を生むことです。痛いから動かさない、動かさないからいっそう固まる、固まるからますます動かしづらい。この輪をどこかで断ち切っておくと、同じ痛みでも暮らしやすさがだいぶ変わります。効きめには個人差があり、施術はあくまで補助。診断と手術の判断は、整形外科医にゆだねる部分です。
体を動かすリハビリのような機能訓練も、施術の中で一緒に行います。これは施術に含まれていて、追加の料金はかかりません。無理に大きく動かすのではなく、痛みの出ない範囲で関節を通してあげる。その積み重ねが、寝たきりや歩けなくなる状態を遠ざけます。
痛い足で通うより、家で受けるという選び方
変形性股関節症のつらいところは、痛む股関節を使わないと通院そのものができない点です。バス停まで歩く、電車の階段を上る、待合室で長く座る。治療に行くための移動が、いちばん痛い動作の連続になっている。これでは何のために通っているのか分からなくなります。訪問なら、その移動がまるごと要りません。国家資格を持った施術者がご自宅に伺い、いつも過ごしている布団や椅子の上で受けられます。移動で痛みを増やさずにすむこと自体が、この病気にとっては大きな意味を持ちます。
料金のことと、医療のなかでの位置づけ
これは、医師の同意にもとづく医療保険(療養費)で受けられる施術です。要介護認定は必要ありません。かわりに医師の同意書が要ります。費用は、1回の施術で総額3,950円。1割負担の方なら1回およそ395円です。週2回で続けた場合、1割負担で月におよそ3,160円が目安になります。出張費や交通費は別にいただきません。介護保険の限度額とは別枠なので、デイサービスなどを使っていても、その枠を圧迫することなく併用できます。制度のしくみは医療保険と介護保険のちがいの記事で、費用の内訳は「料金についての記事」でくわしく説明しています。
かばって動かなくなる、その前に
ふだんの過ごし方で気をつけたいことは、そう多くありません。股関節は冷えると痛みが出やすいので、夏でも冷房で冷やしすぎない。痛くない範囲で、こまめに姿勢を変える。同じ格好で座り続けない。体重が増えると股関節にかかる負担がそのまま増えるので、増やさない工夫をしておく。無理して痛みをこらえながら動くのは、かえって逆効果です。変形性股関節症は、痛いからかばう、かばうから筋力が落ちる、筋力が落ちるからもっとかばう、という流れで少しずつ動ける範囲が狭まっていきます。だからこそ、まだ自分で動けるうちに手を打っておく値打ちがあります。歩けなくなってからではなく、その一歩手前で。私たちがお役に立てるのは、ちょうどそのあたりです。
よくある質問
変形性股関節症でも保険で受けられますか?
股関節まわりの慢性的な痛み・こわばりについて、医師が鍼やお灸での治療を必要と認め、通院がむずかしければ、医療保険の対象になる場合があります。保険はすべて鍼灸で算定します。まずは今の状態と通院の状況をお聞かせいただければ、対象になりそうかを一緒に確認します。
股関節の変形は鍼灸で治りますか?
変形そのものを元に戻すものではありません。すり減った軟骨や関節の形を治すことはできず、楽になり方にも個人差があります。まわりの筋肉のこわばりを和らげ、動かしやすさや歩きやすさを支える補助という位置づけです。治療の主役は整形外科などの医療になります。
人工関節の手術をした後でも受けられますか?
主治医の指示のもとで、まわりの筋肉を和らげるケアができる場合があります。動かしてよい範囲は手術の内容によって違うため、担当の先生の方針を確かめたうえで進めます。まずはご相談ください。
歩くのがつらくても、寝たきりでも来てもらえますか?
はい。通院がむずかしい方のご自宅へ伺うサービスです。横になったまま、あるいは座ったままでも受けられますので、出かける負担なくケアを続けられます。
転んだあとに股関節が強く痛むのですが、来てもらえますか?
転倒のあとに強く痛む、体重をかけられない、熱感や腫れがある、じっとしていても激しく痛むといったときは、骨折などの可能性があります。まず整形外科など医療機関を受診してください。原因がはっきりして落ち着いてからのケアなら、あらためてご相談いただけます。
費用はどのくらいかかりますか?
1回の施術は総額3,950円で、お支払いは負担割合の分だけです。1割の方で約395円が目安です。別途の出張費や交通費はかからず、エリア内は同額。介護保険の区分支給限度額とは別枠なので、デイサービスなどと重ねても枠を圧迫しません。
整形外科に通っていても鍼灸を受けられますか?
同じ部位・同じ病名で医療保険のリハビリと鍼灸を同時に使うことは原則としてできませんが、受けやすい形は状況によって変わります。かかりつけの先生やケアマネジャーと相談しながら進められますので、今の通院の様子をお聞かせください。
鍼だけでなく、体を動かすケアもしてもらえますか?
はい。鍼やお灸を中心に、痛くない範囲で関節を動かす手技や、筋力を保つ機能訓練も、組み合わせます。これらに追加の料金はかかりません。その日の状態に合わせて、無理のない内容にととのえます。