
年を重ねたご家族が、以前より口数が減った、好きだったことをしなくなった、一日じゅう横になっている。そんな様子に不安を覚えることがあると思います。先にはっきり書いておきますが、鍼灸はこうした心の状態を治すものではありません。ここでお伝えするのは、体をいたわるという別の入り口から、そっと寄り添える部分があるかもしれない、というお話です。
先に要点だけ。気分の落ち込みが強い、2週間以上ずっと続いている、夜眠れない日が続く、食べられなくなった、消えてしまいたいといった言葉が出る。こうしたときは、体のケアで様子を見るのではなく、まず主治医やかかりつけの医療機関、精神科・心療内科、あるいはお住まいの地域包括支援センターにご相談ください。鍼灸はそれに代わるものでは決してありません。そのうえで、医師が必要と認めた慢性の痛みがあれば、はり・きゅうを医療保険で受けられます。1回の施術は総額3,950円、1割負担で約395円が目安です。
これは、気の持ちようだけの問題ではありません
気分の落ち込みや意欲の低下は、加齢のなかで誰にでも起こりうる自然な波であることもあれば、体の不調や環境の変化が背景にあることもあります。まず知っておいていただきたいのは、本人の気の持ちようだけの問題ではない、ということです。
励まそうとして「しっかりして」と声をかけることが、かえって本人を追い詰めることもあります。ご家族が良かれと思ってしたことで関係がこじれるのは、見ていてつらいものです。
落ち込みが強い、長く続くときは、先に相談先へ
何よりも先にお伝えしたいことがあります。落ち込みが強い、2週間以上続いている、眠れない、食べられない、消えてしまいたいといった言葉が出る。こうしたときは、施術より先に主治医や精神科・心療内科、地域包括支援センターにご相談ください。
うつなどの病気は、適切な治療やサポートで支えられるものです。鍼灸はそれに代わるものではありません。ご家族だけで抱え込まず、専門の相談先とつながることが、いちばん確かな一歩になります。地域包括支援センターは、対応エリアの各市区に設けられています。
体のつらさが、気持ちを重くしていることもある
気分の落ち込みと体の状態は、思っている以上に結びついています。あちこちが痛む、体がこわばって動きにくい、夜ぐっすり眠れない。こうした体のつらさが続くと、何をするのもおっくうになり、気持ちまで沈んでいくことは珍しくありません。
逆に言えば、体の痛みやこわばりが少し和らぐことで、動くのが億劫でなくなり、気持ちに小さな余裕が生まれることもあります。訪問の鍼灸ができるのは、この体の側からのはたらきかけです。心そのものを治すのではなく、体のつらさを減らすことで、暮らしの土台をほんの少し支える。そういう控えめな役割だと考えています。夜眠れないことが続いている場合は寝つけない・夜中に目が覚めるもあわせてご覧ください。
誰かが定期的に訪ねてくる、その時間そのもの
外に出る機会が減り、人と会うことが少なくなると、一日の変化が乏しくなりがちです。そんな暮らしのなかで、決まった曜日に施術者が訪ねてくるということ自体が、生活に小さなリズムを生むことがあります。
体をゆだねて手当てを受ける時間、少し言葉を交わす時間。それは施術の効果とは別に、その方の一週間にひとつの区切りをつくります。無理に元気づけようとするのではなく、ただ体をいたわりに来る人がいる、というくらいの距離感です。ご家族以外の人とのささやかな接点が、閉じがちな暮らしにわずかな風を通すこともあると感じています。
外に出る、その最初のきっかけとして
気持ちが沈んでいるときほど、体を動かすのはおっくうになります。けれど、痛みやこわばりが和らいで体が動かしやすくなると、少し庭に出てみようか、近くまで歩いてみようか、という小さな一歩につながることがあります。
大きな変化をお約束はできません。効果の感じ方にも個人差があります。それでも、体が楽になることが、閉じこもりがちな暮らしをほんの少しひらく助けになれば、と考えています。外出を目標にしたいときの組み立てはまた外を歩きたいを支えるに書きました。
連れ出さずにすむ、ということ
気分が沈んでいる方を、外の治療に連れ出すのは、ご本人にもご家族にも大きな負担です。出かける準備をうながすこと自体がひと苦労で、それがまた双方の気持ちをすり減らします。
訪問なら、住み慣れた部屋で、身支度を整える必要もなく、いつもの場所で受けられます。ご本人が今日は行きたくないと気を張らずにすむこと、ご家族が付き添いのために予定をやりくりしなくてよいこと。この負担のなさは、続けやすさに直結します。
ご家族が抱え込まないために
元気のないご家族を支える側もまた、知らず知らずのうちに疲れをためこみます。自分がなんとかしなければと一人で背負うと、共倒れになりかねません。それだけに、頼れる先を早めに知っておくことが大事になります。
主治医や地域包括支援センター、ケアマネジャー、専門の医療機関。それぞれに役割があります。訪問の鍼灸も、そうした支えのひとつとして、体のケアの面から関わります。施術のなかで気づいた体の変化は、ご家族やケアマネジャーを通じて関わる方々と共有し、みんなで見守る体制の一部になれればと思っています。
費用と、うかがえる範囲
気分の落ち込みそのものが保険の対象になるわけではありません。慢性的に続く痛みやしびれ、こわばりがあって、医師が鍼やお灸での施術を必要と認めて同意書を出した場合に、はり・きゅうが医療保険の対象になります。1回の施術は総額3,950円で、自己負担は1割の方で約395円、2割の方で約790円。週2回なら1割負担でひと月およそ3,160円が目安です。介護保険の支給限度額とは別枠です。内訳は料金はいくら?医療保険の自己負担額と仕組み、同意書の頼み方はかかりつけ医への頼み方と流れをご覧ください。
うかがえるのは、大阪府の豊中市・吹田市・茨木市・高槻市・箕面市・摂津市・池田市、兵庫県の尼崎市・伊丹市、大阪市の淀川区・東淀川区・都島区・北区・旭区です。東京・神奈川は玉川院から世田谷区、川崎市の宮前区・高津区、横浜市の都筑区・青葉区にうかがっています。エリア内であれば別途の出張費・交通費はかからず、料金はどこでも一律です。うかがうのは平日の9時から18時までで、土曜・日曜・祝日はお休みをいただいています。
よくある質問
鍼灸でうつや気分の落ち込みは治りますか。
いいえ、鍼やお灸でうつなどの病気を治すことはできません。訪問の鍼灸ができるのは、体の痛みやこわばりを和らげ、暮らしの土台を体の面から支えることです。落ち込みが強い、長く続く、眠れない・食べられないといった状態が続くときは、施術より先に主治医や精神科・心療内科、地域包括支援センターにご相談ください。
元気がない家族に、体のケアだけ受けさせることはできますか。
医師が施術の必要を認めた慢性の痛みなどがあれば、その痛みへの施術として医療保険で受けていただけます。気分の落ち込みそのものが対象になるわけではありません。まずは体で困っていることをお聞かせください。そのうえで、相談先への相談と並行しながら、体のケアの面からできることを一緒に考えていきます。
本人が乗り気ではありません。それでも頼めますか。
ご相談はお受けできます。無理に説得することはしませんし、初回は体を触らずに話をうかがうだけで終えることもあります。はじめての方には無料体験をご用意していますので、一度だけ試していただく形から入るのが現実的だと思います。
施術中に、気持ちの話を聞いてもらえますか。
話されたいときはうかがいます。ただ、こちらから聞き出すことはしません。黙って受けておられる方も多く、それで構わないと考えています。気になる様子があれば、ご家族や担当のケアマネジャーにお伝えします。
どのくらいの間隔で受けるものですか。
週1回から2回で始める方が多いです。体の状態を見ながら間隔を調整します。決まった曜日に来る人がいることそのものに意味があると考えているので、続けやすいペースを一緒に決めます。
1回いくらかかりますか。
自宅での1回の施術は総額3,950円で、1割負担の方はおよそ395円が目安です。週1回ならひと月の自己負担はおよそ1,580円ほど。手技や身体を動かす運動は鍼灸に加えるケアとして行い、別途の料金はいただきません。