
「知らない人を家に上げたくない」「そこまでしてもらわなくても」。親御さんがそう言って首を縦に振らないとき、手配したご家族のほうが、かえって身動きが取れなくなります。ただ、この渋りは頑固さではなく、長く自分の足で立ってきた人の、ごく自然な反応です。押し切らずに、その気持ちごと受けとめながら小さく始める道があります。
この記事のポイント
ご本人が乗り気でないなら、無理にすすめなくて大丈夫です。肩だけ・10分だけといった軽い始め方や、費用のかからない体験という入り口があり、合わないと感じたら続けなくてかまいません。声のかけ方の段階から、ご家族だけで相談できます。のびのびは大阪市・北摂・阪神間へうかがっています。
「嫌がる」の奥にある気持ちを、いくつかに分けてみる
親に訪問施術をすすめたら、はっきりと嫌な顔をされた。あるいは「いいよ、いいよ」と手を振ってやんわり断られた。そういうご相談をよくいただきます。ここで大事なのは、その「嫌がる」をひとかたまりにしないことです。理由はひとりひとり違いますし、同じ人でも日によって揺れます。
他人を家に上げること自体が落ち着かない、という方がいます。散らかった部屋を見られたくない、着替えるのも面倒だ、という生活感のある理由もあります。お金がかかるなら申し訳ない、と気兼ねしている場合もあれば、「まだ自分でなんとかできる」と弱っている姿を見せたくない気持ちもあります。昔しつこい訪問販売に困った記憶から、家に来る人すべてを警戒している方もいます。そして案外多いのが、「この歳でいまさら良くなるわけがない」という静かな諦めです。
背景が違えば、かける言葉も変わってきます。まずはどのタイプに近いのか、そっと見立てるところから始めると、その後がずいぶん楽になります。
頭ごなしに説得しないほうが、結局うまくいく
家族としては、痛そうにしている親を見ていられなくて、つい「なんで行かないの」「体のためでしょう」と正論を重ねてしまいます。気持ちはとてもよく分かります。ただ、正しさで押していくほど、本人は「言い負かされた」と感じて、かえって心を閉じてしまうことがあります。
反発しているように見えても、多くは頑固なのではなく、長いあいだ自分の足で生きてきた人の自然な反応です。誰かの世話になることに慣れていないだけ、という方が本当に多い。だから説き伏せるのではなく、本人が「それなら、まあ」と思える入り口をいっしょに探すほうが近道です。急がず、断られても関係が悪くならない距離感で話すことをおすすめしています。
体そのものより、「困っている動作」から話を始める
「施術を受けよう」と切り出すと身構えられますが、日々の困りごとから入ると、話が続きやすくなります。腰が痛くて夜中に何度も目が覚める、正座から立ち上がるのがつらい、肩が上がらなくて上の棚に手が届かない。そういう具体的な場面には、本人も「たしかに困っている」と認めやすいものです。
訪問の鍼灸・マッサージは、医療保険を使う場合、神経痛・リウマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症といった症状が対象になります。「五十肩の治療に来てもらう」と言うより、「肩が動きやすくなるように、家でみてもらえる人がいるらしいよ」と伝えるほうが、すっと入ることが多いです。動きが楽になれば暮らしも少し軽くなる、その一点から話してみてください。
お金の心配には、具体的な金額で答える
「お金がかかるでしょう」という遠慮は、金額がぼんやりしているほど大きくふくらみます。だからこそ、はっきりした数字を伝えるのがいちばん効きます。当院の場合、1回の施術は総額で3,950円です。ここに医療保険が使えるので、実際に支払うのはその一部になります。
自己負担が1割の方なら1回あたり約395円ほど。仮に週2回続けても、1割負担なら月におよそ3,160円です。「思っていたより負担が軽い」と感じてもらえると、気兼ねがずいぶんほどけます。しかも身体を動かす運動も、鍼灸に加えるケアとして行います。これらに追加の料金はかかりません。利用にあたっては医師の同意書が必要ですが、要介護認定は要りません。介護保険を使っている方でも、その限度額とは別の枠なので、デイサービスなどを削らずに併用できます。
「一度だけ試してみない?」という軽い提案にする
ずっと続けるかどうかを最初に決めさせようとすると、答えは「いらない」になりがちです。そこで、まず一回だけ試してみる、という小さな入り口を用意します。合わなければやめていい、無理に続けなくていい。そう最初に伝えておくと、本人も「試すだけなら」と受け取ってくれます。
肩だけ、腰だけと部位をしぼったり、短い時間から始めたりすることもできます。ひとり暮らしの親御さんの場合は特に、まず様子を見たいという声が多いです。そうした受け方については「一人暮らしでも受けられる?」でも触れていますので、あわせて読んでみてください。一度受けてみて、本人が「これならいいかも」と思えるかどうか。判断はそのあとで十分です。
主治医やケアマネ、そして家族の同席という後押し
家族が何度言っても動かなかったのに、かかりつけの先生に「受けてみたら」と一言もらったとたん、あっさり承知した。そんなことは珍しくありません。本人が信頼している相手からの勧めは、家族の説得の何倍も届きます。ケアマネジャーがついている方なら、担当さんに相談して話を通してもらうのも良い方法です。
初回だけ家族が同席する、というのも安心につながります。知らない人と二人きりは緊張しますが、そばに家族がいれば表情もやわらぎます。どんな人が来て何をするのか、家族が先に確かめておけば、あとから「大丈夫だったよ」と伝えることもできます。体がまだ元気なうちに備えを始める意味については「「まだ大丈夫」のうちに始める在宅ケア」で詳しくご紹介しています。
正直に伝えることが、いちばん受け入れられる
受け入れてもらいたい一心で、つい「これで良くなるよ」と言いたくなります。けれど、そこは正直でいたほうが信頼されます。施術は病気を治すものではありませんし、効果の出方には個人差があります。合わなければやめてかまわない。これを本人にもきちんと伝えると、身構えていた人ほど、かえって「そこまで言うなら」と肩の力を抜いてくれます。
押し売りをしないこと。それ自体が、これから長く付き合っていく相手として選んでもらえる理由になります。今日すぐ決めなくてもいいのです。困っている動作がひとつでも楽になれば、その先の暮らしはきっと変わってきます。焦らず、本人の気持ちの歩幅に合わせて、そっと背中を支えてあげてください。
よくある質問
本人がどうしても首を縦に振りません。無理にでも受けさせるべきでしょうか?
押し切るのはおすすめしません。気持ちを一度受けとめ、10分ほどの短い施術や、費用のかからない体験から。ご本人が納得できるところまで待つほうが、結局はうまくいきます。
体験だけ受けて、続けないという形でも大丈夫ですか?
かまいません。どんなものか知っていただくのが目的なので、合わないと感じたら、そこで区切っていただいて結構です。
最初から全身をお願いしないといけませんか?
いいえ。肩だけ、足だけといった具合に、気になる一か所から、短い時間で始められます。慣れてから広げても遅くありません。
本人抜きで、家族だけで相談してもいいですか?
もちろんです。切り出し方の段階から、ご家族だけのご相談を承ります。親御さんの性格に合わせた進め方を、相談しながら決めていきます。
費用はどのくらいかかりますか?
続ける場合、1回で総額3,950円、1割負担ならおよそ395円が1回の目安です。訪問分も込みで、別途の出張費はいただきません。明細は月ごとにお渡しします。
介護保険を使っていても受けられますか?要介護認定は要りますか?
受けられます。この施術は医療保険(療養費)扱いで、介護保険の限度額とは別枠です。医師の同意書は要りますが、要介護認定は不要です。
あとからしつこく勧誘されることはありませんか?
売り込みのような働きかけはしません。合わないと感じられたら続けなくて結構ですし、そのことはご本人にも先にお伝えいただけます。
施術のあいだ、家族が付き添っていてもいいですか?
どうぞ。とくに初回は、そばに家族がいると本人も安心しやすくなります。慣れてきたら、私どもにおまかせいただいてもかまいません。