
「まだ自分で歩けているから、うちはまだいい」。ご家族からよく聞く言葉です。けれど、歩く力はいちど大きく落ちると、元の調子まで戻すのに思った以上の時間と根気がかかることがあります。ですから、困りごとが表に出ていない「まだ大丈夫」の時期にこそ、できる手当てがあります。あおるためではなく、後で「あのとき始めておけば」と思わずにすむように。その考え方を、順を追ってお話しします。
この記事のポイント
歩く力は、落ちてから取り戻すより保っておくほうがずっと楽です。だから「まだ大丈夫」の今こそ始めどき。訪問鍼灸マッサージは自宅で、こわばりや痛みをやわらげ動く力を保つお手伝いをします。医療保険で受けるため要介護認定は不要。費用は1回およそ395円(1割・総額3,950円)が目安です。
「まだ大丈夫」の一言に、ほっとしていませんか
ご家族から相談をいただくとき、よく聞くのが「本人がまだ大丈夫って言うので」という言葉です。自分の足で歩けて、身のまわりのことも一通りできている。そういう時期は、たしかに急いで何かを始める理由が見あたりません。けれど、その「まだ大丈夫」の中で、少しずつ進んでいることがあります。
年齢を重ねると、体の変化はある日突然やってくるわけではありません。立ち上がりがほんの少し遅くなる。出かけるのがおっくうになって、外に行く回数が減る。こうした小さな変化は、本人も家族も気づきにくいものです。気づいたときには、以前より動ける範囲がせまくなっていた、ということも珍しくありません。そのため、元気に見えるいまが、体のことを考えるちょうどいいタイミングだと私たちは考えています。
動かさないと固まる、という体の仕組み
人の体は、使わない部分から少しずつ動きにくくなっていきます。関節も筋肉も、動かす機会が減れば、それだけこわばりやすくなる。ここに、高齢期のやっかいな悪循環があります。
痛みや疲れで動く量が減る。動かさないから関節が固まり、筋力も落ちていく。すると、以前は何でもなかった動作がつらくなって、ますます動かなくなる。この流れは、いったん回りはじめると、自分の意思だけではなかなか止められません。冬にこもりがちになった数か月で、春にはずいぶん動きが重くなっていた、という話もよく耳にします。落ちてしまった動きを取り戻すのは、いまある動きを保つことよりも、ずっと手間がかかります。
早めにケアを取り入れる、ほんとうの意味
訪問での鍼灸マッサージは、病気を治すためのものではありません。予防で病気を防げます、と言い切ることもできません。効果の感じ方には個人差がありますし、そこは正直にお伝えしておきたいところです。
では何をするのかというと、いま動かせている関節の可動域を保つお手伝いです。こわばってきた筋肉をゆるめ、めぐりをうながし、痛みが強くなる前にやわらげておく。体が動きやすい状態を、できるだけ長く保っておくための時間だと考えてください。買い物に行く、通院する、たまに孫の顔を見に出かける。そうした日々の当たり前を続けやすくすること。それが、早めに始める一番の意味だと思っています。
施術の時間が、そのまま見守りにもなる
もうひとつ、あまり語られない利点があります。決まった曜日に施術者が家に入ることで、生活のリズムの中に人の目が加わる、ということです。
週に何度か体にふれていれば、先週と今週の違いに気づきやすくなります。むくみ方が変わった、少し元気がない、足の運びがいつもと違う。こうした変化は、そばで体をみている者だからこそ拾えることがあります。ひとり暮らしのご家族や、離れて暮らしていて頻繁には様子を見に行けないご家庭にとって、定期的に人が入ることそのものが、ささやかな安心につながります。
家族だから気づける、小さなサイン
本人が「まだ大丈夫」と言っても、そばにいる家族のほうが先に気づくことがあります。立ち上がるときに手をつく回数が増えた。歩くのが少しゆっくりになった。前は行けていた距離を、途中で休むようになった。外出の誘いを断ることが増えた。どれも、それだけを見れば些細なことです。
でも、こうした動作の芽に気づいたら、それが相談どきのサインだと思ってください。無理に説得したり、急かしたりする必要はありません。本人が乗り気でないときは、それはそれで理由があります。そのあたりの向き合い方は「親が訪問施術を嫌がる・遠慮するとき」でも触れていますので、参考になさってください。ふらつきや転びやすさが気になりはじめたなら、めまい・ふらつきと転倒予防もあわせて読んでいただければと思います。
費用と保険のこと
費用の面は、始める前にいちばん気になるところだと思います。この施術は医療保険の療養費という枠を使い、医師の同意書があれば受けられます。要介護認定は必要ありません。介護保険を使っている方でも、その限度額とは別の枠になるので、両方を併用できます。
1回の総額は3,950円で、そのうち自己負担は保険の割合によって変わります。1割の方でおよそ395円です。たとえば週2回のペースなら、1割負担で月におよそ3,160円。関節を動かす機能訓練も鍼灸に加えて行います。ひとつ気をつけたいのは、同じ部位について医療保険のリハビリと鍼灸を同時に算定することはできない点です。保険の対象となるのは、神経痛・リウマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症で、いずれも医師の同意が前提になります。
よくある質問
まだ元気で普通に歩けますが、それでも受ける意味はありますか?
はい、動く力を保つための備えとして意味があります。大きく落ちてから取り戻すより、今の状態を保つほうが本人の負担が軽くてすむことが多いためです。効果の感じ方には個人差があります。
要介護認定を受けていなくても利用できますか?
利用できます。この施術は医療保険で受けるしくみで、介護保険の限度額とは別枠のため、要介護認定は必要ありません。ただし医師の同意書は必要です。まだお元気な方でも、医師が必要と認めれば対象になりえます。
どのくらいの頻度で受けるのがよいですか?
状態によりますが、週1〜2回を目安にご提案することが多いです。回数だけを追うのではなく、その方の体調や暮らしに合わせて一緒に決めていきます。
続ければ、必ず今の歩く力を保てますか?
「必ず」とはお約束できません。加齢による変化もあり、必ず歩けるように保てるわけではないからです。ただ、こわばりや痛みをためにくくし、今の動きを保ちやすくすることは期待できます。個人差があります。
費用はいくらくらいかかりますか?出張費は別に必要ですか?
1割負担の方で1回およそ395円(1回・総額3,950円)が目安です。訪問にかかる費用は料金に含まれており、別立ての出張費はいただきません。明細は月ごとにお渡しします。
何歳くらいから考え始めればよいですか?
年齢で一律に決まるものではありません。「立ち座りに手をつくようになった」「歩くのが遅くなった」など、暮らしの中で気になる変化が出てきたら、それが考えどきのサインです。