認知症の方の体のこわばり・痛みを穏やかに

認知症が進むと、体を動かす機会がへってこわばりや痛みが出やすくなったり、気持ちが落ち着かず夜眠れなくなったりと、体の面でも支えが必要になってきます。外に連れ出して治療を受けさせるのは、ご本人にもご家族にも大きな負担です。のびのび訪問施術院では、外出して通うのが負担になった方のもとへ出向き、鍼とお灸で体を整えています。はじめにはっきりお伝えしておきたいのは、鍼灸は認知症そのものを治すものではない、ということです。そのうえで、体のつらさをやわらげ、心と体を穏やかに保つ寄り添い方として、訪問という選択肢をご紹介します。

この記事のポイント

認知症の方が抱えやすい体のこわばりや痛みに対して、医師が治療の必要を認めれば訪問鍼灸マッサージを医療保険(鍼灸で算定)で受けられます。国家資格者が自宅に伺い、できるだけ同じ担当が顔なじみになりながら穏やかにケアを続けます。鍼灸は認知症そのものを治すものではなく、体の不調をやわらげて過ごしやすくするためのものです。1割負担の方なら1回およそ395円(保険での総額3,950円)で受けられます。この費用は介護保険の支給限度額とは別枠です。週2回のペースなら、ひと月の自己負担はおよそ3,160円(1割の方)になります。対応エリアは大阪府北部・大阪市の一部と尼崎市・伊丹市です。ご自宅へうかがい、はり・きゅう・マッサージの施術を行います。

言葉にできない不快が、体のこわばりに出ていることがある

認知症が進むと、「ここが痛い」「さわらないで」と言葉で伝えることがむずかしくなっていきます。けれど、不快そのものが消えるわけではありません。表情がこわばる。体をさわられると顔をしかめる。夕方になると落ち着かず、そわそわと立ったり座ったりをくり返す。ご家族から見て理由のわからないその様子の裏に、じつは肩や腰のこわばり、動かしにくくなった関節の痛みが隠れていることがあります。

ご本人は「痛い」と言えないまま、なんとなく機嫌が悪い、なんとなく不安、という形でそれを表しているのかもしれません。私たちが体にふれてみると、腕の付け根がかたく縮んでいたり、ふくらはぎがぱんぱんに張っていたりする。声にならないサインを、体の側から読み取っていく。それがこの仕事の入り口です。

動かさない時間が続くと、関節はかたくなっていく

一日の多くをベッドや椅子で過ごすようになると、筋肉は使われないまま縮み、関節は少しずつ動く範囲を狭めていきます。ひじが伸びきらない。指が開きにくい。股関節がかたくて、おむつ交換のたびにご本人がつらそうにする。こうした拘縮は、放っておくと介助そのものを難しくし、着替えや清拭のときの痛みにもつながります。

認知症の方の場合、「動かすと痛いから動かさない」「動かさないからもっとかたくなる」という悪循環に、本人が言葉で気づけない分だけ入りやすい面があります。だからこそ、外から手を添えて関節をゆっくり動かし、今ある動く範囲を守っていくことに意味があります。脳梗塞や脳出血の後に体の片側が動きにくくなった方のケアとも重なる部分が多く、そちらは「脳梗塞・脳出血の後遺症のケア」で詳しく触れています。

私たちにできるのは、体をやさしくほぐし、穏やかな時間を支えること

はっきりお伝えしておきたいことがあります。はり・きゅう・マッサージは、認知症を治すものでも、進行を止めるものでもありません。失われた記憶を戻すこともできません。私たちが担うのは、あくまで体のケアです。

こわばった筋肉をゆるめ、血のめぐりをうながし、関節が動く範囲を保つ。痛みや張りをやわらげて、少しでも穏やかに過ごせる時間を増やす。体が楽になると、表情がほどけたり、夜の眠りが深くなったりすることもあります。ただ、感じ方には人それぞれの差があり、同じ施術でも反応はさまざまです。何度か通うなかで、その方に合う力加減や順番を探していきます。

慣れた顔、慣れた手で、驚かせないように進める

認知症の方にとって、知らない人に急に体をさわられることは、それだけで大きな不安になります。うしろから声もかけずに腕を持てば、身をすくめて当然です。ですから、なるべく毎回同じ施術者がうかがい、顔と手を覚えていただくことを大切にしています。

「これから腕をさわりますね」「ゆっくり伸ばしますよ」と、これから何をするかを短く声にしてから、手をあてる。いやがる様子があれば無理に続けず、さわれるところ、さわっても大丈夫なところから始めます。その日の機嫌や体調に合わせて、内容を柔らかく変えていく。決まった手順をこなすのではなく、ご本人の安心を先に置く。慣れた手の感触が「この人は大丈夫」という記憶になっていくと、施術そのものが落ち着いた時間に変わっていきます。

医療保険で受けられます。要介護認定はいりません

費用の心配から、諦めてしまうご家族はめずらしくありません。この施術は、医師が同意書を書いてくだされば、医療保険(療養費)を使って受けられます。介護保険の要介護認定は必要ありません。まだ認定を受けていない方でも始められます。

ここは正確にお伝えします。医療保険のはり・きゅうには代表的な対象があり、正式には神経痛・リウマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症の六つです。認知症そのものはこの中に含まれません。ただし、認知症の方が同時に抱える神経痛や関節の痛み・こわばりについて、医師が「治療が必要」と認めた場合には、医療保険の対象になりえます。もうひとつのあん摩マッサージ指圧の療養費は、筋肉の麻痺や関節の拘縮など、医師が施術の必要を認めた症状が対象になる枠組みです。のびのび訪問施術院は、はり・きゅうを施術のベースにしていて、保険はすべて鍼灸で算定します。まずは主治医にご相談ください。

介護保険を使ってデイサービスやヘルパーを利用している方でも、こちらは別の枠として併用できます。介護保険の限度額を圧迫することはありません。ひとつだけ注意点として、同じ部位について医療保険のリハビリを受けている場合、その部位のはり・きゅうを同じ月に重ねて算定することはできません。関節を動かす機能訓練は鍼灸に加えて行っており、追加の料金がかかるものではありません。

費用のめやす

1回あたりの総額は3,950円です。医療保険の自己負担割合に応じて、実際にお支払いいただく額が決まります。負担割合が1割の方はおよそ395円です。1回あたり数百円の負担とお考えいただくと、見当をつけやすいかもしれません。

たとえば1割負担の方が週2回のペースで続けた場合、ひと月でおよそ3,160円です。毎日の介護に追われるご家庭でも、無理なく続けやすい範囲におさまります。回数やペースは体の状態とご希望に合わせて相談しながら決めていきます。

急な変化があるときは、まず主治医へ

体をほぐすケアと、医師の診察が必要な状態は、分けて考える必要があります。急にぐったりして反応が鈍い。強い痛みを訴えている、あるいは訴えられないほどつらそう。熱が出ている。今までと様子が違い、混乱が急に強まった。こうしたときは、施術よりも先に主治医の受診を優先してください。体調の急変の裏に、別の病気が隠れていることがあるからです。

足元がふらついて転びやすくなった、立ち上がるときにめまいがあるようだ、といった場合の見方は「めまい・ふらつきと転倒予防」で詳しくご紹介しています。私たちは訪問のたびにその日の体を観察し、気になる変化があればご家族やケアマネジャー、主治医と共有していきます。ご本人が言葉にできない分を、まわりの目でおぎなっていく。その一員として、体の側から穏やかな毎日を支えていければと思っています。

よくある質問

認知症でも保険で受けられますか?
認知症そのものではなく、それにともなう肩や腰の痛み、手足のこわばりなどについて、医師が治療の必要を認めれば、保険を使ったケアの対象になります。まずは体のどんなところにお困りか、お聞かせください。

じっとしていられないのですが受けられますか?
その日の様子に合わせて、できる範囲で無理なく進めます。触れられることを嫌がるときは控えたり、短い時間で切り上げたりと、ご本人の気持ちを第一に対応しますので、ご安心ください。

認知症の家族の体のこわばりにも対応できますか?
こわばりや痛みについて医師が必要と認め、通院がむずかしければ対象になる場合があります。穏やかに、その方の様子に合わせて行います。

認知症で施術を嫌がらないか心配です
無理に進めず、まず慣れていただくことから始めます。ご家族に同席いただいてもかまいません。

認知症の家族に毎回同じ人が来てくれますか?
できるだけ同じ担当者が伺います。顔なじみになることで安心につながります。

施術中の声かけはどうすればいいですか?
穏やかに、短い言葉で伝えると落ち着きやすいことをお伝えします。その方に合う関わり方を一緒に探します。

コラム一覧へ戻る