てんかん発作のある高齢のご家族へ|発作に備えながら、体のこわばりを手当てする

てんかんのある方のご家族から、体のこわばりについてご相談をいただくことがあります。発作そのものへの治療は主治医の領分ですが、日々の体のかたさには別に手当てのしようがあります。備えとして何を決めてから施術に入るのかをお伝えします。

この記事のポイント

てんかんそのものは療養費の対象になりませんが、腰痛症や五十肩など医師が同意した病名があれば、発作のあるご家族でも訪問鍼灸マッサージを受けられます。当院は発作を止める施術はしません。発作の型と前ぶれ、頓用薬の置き場所を先にうかがい、うつ伏せの時間を短く区切り、発作が起きた日は施術をせずに引き上げます。1回の総額は3,950円、1割負担で395円です。

てんかんという病名だけでは、保険で受ける理由になりません

医療保険の療養費で鍼やお灸を受けるとき、その根拠になるのは医師が同意した病名です。てんかんという病名だけでは対象になりません。実際に多いのは、発作のあとに残る首や肩の痛み、動かない時間が続いて硬くなった腰や脚を、腰痛症・五十肩・頸肩腕症候群・神経痛といった病名で診ていただく形です。

治療の柱は抗てんかん薬で、そこを動かすのは主治医の役目です。鍼灸で発作が減る、起きなくなるといった説明を当院からすることはありません。引き受けるのは、発作や薬とつきあう暮らしのなかでたまっていく、体のこわばりのほうです。

初回にうかがう、発作についての5つ

ひとくちに発作といっても、現れ方はさまざまです。全身が固くなってふるえるもの、数十秒ぼんやりして止まるもの、片方の手だけがぴくつくもの。ご家族から見た「いつもの発作」がどんな様子かを、そのまま言葉にしていただきます。

あわせて、直近の発作がいつだったか、起きやすい時間帯があるか、始まる前に気配を感じる方か、頓用のお薬をどこに置いているか、主治医とかかりつけの病院はどこか。この5つを初回に控えて、記録に残します。

発作が起きたとき、その場でしていること

まず施術をやめ、時計を見ます。何分続いたかが、あとで主治医に伝わるいちばん大事な情報になるからです。体を押さえつけたり、口に指やタオルを入れたりはしません。舌を噛むのを防ごうとして、かえって歯や指を傷めることがあるからです。

硬い物や熱い物を体のまわりからどけ、頭の下に柔らかいものを入れます。眼鏡ははずし、締めつけているものはゆるめます。ふるえが収まったら、吐いたものが気管に入らないよう横向きにして、呼吸と顔色を見ながら待ちます。

救急車を呼ぶのは、こんなときです

けいれんが5分以上続くとき、いったん止まってもすぐ次の発作が始まって意識が戻らないとき、呼吸がはっきり戻らない、唇や爪の色が悪いときは、迷わず119番です。発作が重なって続く状態は、時間が経つほど止めにくくなります。

初めての発作、いつもと型の違う発作、水のなかや階段で起きた発作、頭を強く打った、けがをして出血しているときも受診が必要です。頓用薬の使い方を主治医から指示されているご家庭では、その指示が優先します。

訪問の時間は、発作の起きやすさに合わせます

寝不足の翌日や熱のある日は発作が起きやすいといわれます。決まった曜日と時間にうかがう形にすると生活のリズムが崩れにくく、ご家族も付き添う予定を立てやすくなります。起きやすい時間帯がはっきりしている方は、その時間を外して枠を取ります。

お薬を飲んだ直後に眠気やふらつきが出る方もいます。飲む時刻をうかがったうえで、体を起こしたり向きを変えたりする動きがそこに重ならないように組みます。

うつ伏せは短く区切り、顔の見える向きで

施術中に顔が見えない時間が長いのは避けたいので、うつ伏せは短く区切り、多くは横向きか仰向けで進めます。タオルで顔まわりを覆いこまず、いつでも表情と呼吸が分かる形にします。ベッドの柵を上げ、まわりに硬い物を置かないことも、始める前の決まりごとです。

鍼は本数を絞り、刺したまま長く待つことはしません。お灸は火を扱うので、置く場所と個数を先にお伝えし、早めに取ります。途中で発作が始まってもすぐ消して離せる、その持ち方でしか使いません。

発作のあとは休んでいただき、次の回で加減します

発作が収まったあとは、数分から数時間、ぼんやりしたり深く眠ったりする時間が続きます。このあいだに体を動かすのは負担なので、その日は施術をせずに引き上げます。料金は受けた回数で計算するため、うかがっただけの日にお金はかかりません。

次にうかがったときは、舌や口のなかを噛んでいないか、倒れたときに打った場所はないかを確かめ、ご家族に伝えます。全身の筋肉が強く縮んだあとは首や肩、背中が数日痛むことがあり、そこが手当ての入り口になります。

手当ての中心になるのは、発作そのものより「そのあと」

発作のあとの筋肉痛のほかに、倒れるのが怖くて動く範囲がせまくなり、股関節や膝、足首が硬くなっていく方が多くおられます。座っている時間が長くなると、腰から太ももの裏、ふくらはぎの順に張ってきます。

薬の影響で眠気やふらつきがあると、それだけで一日の活動量が落ちます。動かなかった分の硬さを他動でほどき、その方が安全にできる範囲の足踏みや立ち座りにつなげます。

お薬を減らす相談には、当院からはお答えしません

調子がいいから薬を減らせないか、と聞かれることがあります。ただ、自己判断で量を変えたりやめたりすると発作を招きます。当院が答えを出せることではないので、主治医にそのままお伝えください。飲み忘れや飲み間違いに気づいたときも、薬局か主治医に確認していただきます。

ふらつきや強い眠気、歯ぐきの腫れ、手のふるえが目立つようになったときは、我慢せず診察で伝えてください。皮膚に発疹が出たとき、とくに飲み始めて数週間のうちに出たものは、様子を見ずに早めに相談していただくものです。

同じ手順を、ご家族とケアマネジャー、訪問看護で共有する

発作の記録は、日時・続いた時間・どんな様子だったか・そのあとどうだったか、この4つを短く残しておくと診察で役に立ちます。当院が施術中に気づいた変化も、連絡ノートに書いてご家族と関係する方々に回します。

発作のときに何をして誰に連絡するかを一枚の紙にして貼っておくと、ヘルパーや訪問看護、私たちのように出入りする者が同じ動きをとれます。なお、同じ部位について医療保険のリハビリを受けている期間は、鍼灸を同時に算定できません。介護保険の訪問リハビリやデイサービスとは別の枠です。

1回いくらで、どこまで来てもらえるのか

保険を使ったときの負担は、1回いくらという形で決まっています。1回の総額が3,950円で、1割負担の方は395円、2割負担の方は790円。時間の長さで金額が変わることはありません。

この費用は医療保険の療養費なので、介護保険の限度額とは別枠です。ほかのサービスの枠を減らすことはありません。訪問しているのは、豊中市・吹田市・茨木市・高槻市・箕面市・摂津市・池田市、尼崎市・伊丹市、大阪市の淀川区・東淀川区・都島区・北区・旭区。この範囲であれば出張料などを別にいただくことはなく、住所によって金額が変わることもありません。

発作のようすが変わったら、受診が先です

いつもの発作と型が変わった、回数が急に増えた、止まったあとに片側の手足の力が入らない、ろれつが回らない状態が続く。こうしたときは次の受診を待たず、主治医に連絡してください。頭を打ったあと数週間かけてぼんやりやふらつき、頭痛が強まってくる場合は、慢性硬膜下血腫を疑って受診が必要です。

このほか、発作のあとに熱が続く、食事や水分が数日とれない、転んだあとに足の付け根が痛くて立てないときも、施術より受診が先になります。当院はその場で見立てを下さず、ご家族と主治医へつなぐところまでを役目にしています。

よくある質問

てんかんがあっても施術を受けられますか?
受けられます。てんかんそのものは保険の対象になりませんが、発作のあとに残る首や肩の痛み、動かない時間が続いて硬くなった腰や脚について医師の同意があれば、医療保険で受けられます。

施術中に発作が起きたらどうなりますか?
すぐに施術をやめ、時計を見て続いた時間を記録します。体を押さえつけたり口に物を入れたりはしません。その日は施術をせずに引き上げます。うかがっただけの日に料金はかかりません。

鍼灸で発作は減りますか?
減る、起きなくなるといった説明を当院からすることはありません。治療の柱は抗てんかん薬で、そこは主治医の役目です。

うつ伏せになるのが不安です
うつ伏せは短く区切り、多くは横向きか仰向けで進めます。顔まわりをタオルで覆いこまず、いつでも表情と呼吸が分かる形にします。

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